M&Aにおいて対象会社の株式を100%取得する必要がある場合、TOBなどで株式の大部分を取得したうえで、少数株主の排除(スクイーズアウト)が実施されることがあります。
スクイーズアウトの手法はいくつかあり、具体的には次のような手法が用いられます。
- 株式併合
- 株式売渡請求(特別支配株主の株式等売渡請求)
- 全部取得条項付種類株式
- 現金対価株式交換
- 自己株式取得
本記事では、このうち株式売渡請求(特別支配株主の株式等売渡請求)と全部取得条項付種類株式を取り上げ、それぞれの手続・要件の違いと、税務上の取扱いを整理します。
これらの手法は、税務上の株式交換「等」への該当性と、それに伴う時価評価課税の有無という点では、株式併合と共通する部分が多くあります。
そこで本記事では、共通する税務上の枠組みは概要のみを示し(詳細は株式併合の記事をご参照ください)、各スキームの手法、発動要件・手続などを中心に整理します。
共通する税務上の取扱い(概要)
一定の要件を満たす株式売渡請求・全部取得条項付種類株式は、株式併合と同様に、税務上の株式交換「等」(法2条12号の16)として組織再編税制が適用されます。
この場合、税制適格要件を満たさないとき(例えば、スクイーズアウト後に対象会社株式を譲渡する場合など)には、対象会社(株式交換等完全子法人)において時価評価課税が生じ得ます(法62の9)。
税務上の株式交換等に該当するための具体的な要件や、株式併合における取扱いについては、別記事で整理しています。
本記事では、この共通の枠組みを前提に、各手法に固有の論点を見ていきます。
株式売渡請求(特別支配株主の株式等売渡請求)
株式売渡請求とは
株式売渡請求とは、対象会社の総株主の議決権の90%以上を有する株主(特別支配株主)が、他の株主全員に対し、その保有する株式の全部を売り渡すよう請求できる制度です(会社法179)。平成26年会社法改正により導入されました。

手続上の特徴 ― 株主総会の特別決議が不要
株式併合が株主総会の特別決議を要するのに対し、株式売渡請求は株主総会の決議が不要で、対象会社の承認(取締役会設置会社では取締役会決議)により実行できます(会社法179の3)。
そのため、90%以上を確保できている場合には、手続が簡便でスピーディーという利点があります。
税務上の取扱い ― 特別支配株主が法人か個人かで分岐
株式売渡請求も、一定の要件を満たせば税務上の株式交換等に該当します。
ここで重要なのは、税務上の株式交換等に該当するためには、対象会社の株式を取得する者(一の株主等)が法人であることが前提となる点です。
したがって、特別支配株主が個人の場合には、この要件を満たさず、税務上の株式交換等には該当しません。この場合、対象会社における時価評価課税は生じません。
一方、特別支配株主が法人である場合には、税務上の株式交換等に該当し得るため、適格要件を満たさなければ、対象会社における時価評価課税が問題となります。
「90%以上を確保できているか(特別支配株主に該当するか)」と「株主総会の特別決議を要するか」が、株式売渡請求と株式併合との主な判断軸となります。90%以上をコントロールできる場合は、株式売渡請求が決議不要でスピーディーだといえます。
とはいえ、実際には、個別状況や税務以外の論点等を勘案したうえで、法務アドバイザーとも相談の上、最適な方法を検討する必要があると考えます。
全部取得条項付種類株式
全部取得条項付種類株式とは
全部取得条項付種類株式とは、株主総会の特別決議によって、その種類株式の全部を会社が取得できる旨を定款で定めた種類株式をいいます(会社法108①七、171)。
スクイーズアウトに用いる場合は、既存の普通株式を全部取得条項付種類株式に変更(定款変更)したうえで、会社がこれを取得し、取得対価として交付する株式を調整することで、少数株主の保有分を1株未満の端数とし、現金で買い取って締め出します。

全部取得条項付種類株式は、平成26年会社法改正前は、スクイーズアウトの主流の手法だったといわれています。
しかし、同改正で株式売渡請求が新設され、株式併合によるスクイーズアウトの手続も整備された結果、現在ではあまり用いられるケースは少ないといわれています。
その理由としては、全部取得条項付種類株式は、種類株式を設定するための定款変更を含め、複数の株主総会の特別決議を要するなど手続が煩雑であり、より簡便な株式売渡請求・株式併合に取って代わられたことが挙げられます。
とはいえ、実際には、個別状況や税務以外の論点等を勘案したうえで、法務アドバイザーとも相談の上、最適な方法を検討する必要があると考えます。
税務上の取扱い
税務上は、株式併合と同様、一定の要件を満たす場合に税務上の株式交換等に該当し、適格要件を満たさなければ、対象会社において時価評価課税が問題になると考えます。
スクイーズアウト手法の比較
株式併合・全部取得条項付種類株式・株式売渡請求の主な相違点を整理すると次のとおりです。

いずれも税務上の株式交換等への該当性については共通する一方、要件・決議などにおいて違いが生じます。
まとめ
スクイーズアウトの各手法は、税務上の取扱い(株式交換等該当性・時価評価課税)という点で共通する部分が多い一方、要件・手続、そして最大株主等/特別支配株主が法人か個人かという分岐において違いがあります。
特に、スクイーズアウト後に対象会社株式の譲渡等を予定している場合には、税務上の株式交換等への該当性(=時価評価課税の有無)が、ストラクチャー全体の税効率に大きく影響し得ます。
手法の選択にあたっては、個別状況や税務以外の論点等を勘案したうえで、法務アドバイザーとも相談の上、最適な方法を検討する必要があると考えます。
当事務所では、スクイーズアウトを含むM&A・組織再編のストラクチャー検討や税務DDについて、税理士が直接対応いたします。スキームの選択や税務上の影響についてご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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本記事は、あくまで一般的な取り扱いを記載しているものとなり、個人的な見解も含まれるため、個別の状況に応じて結論が異なる可能性があります。この記事に基づいて具体的な判断や行為を起こす前には、必ず税務専門家に相談する必要があると考えます。
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