法人税法上、支配関係や完全支配関係の有無は、グループ法人税制、組織再編税制、欠損金の利用制限など、さまざまな場面で重要な意味を持ちます。

しかし、株主の中に任意組合、投資事業有限責任組合(LPS)、有限責任事業組合(LLP)、従業員持株会といった「組合」が含まれている場合、株主名簿上の名義だけで判断すると、税務上の結論を誤る可能性があります。

問題の所在

ここで特に問題となるのは、次の点です。

  • 組合を1人の株主として判断するのか
  • それとも組合員ベースに判断するのか

任意組合等は、税務上、組合自体が独立した納税主体となるのではなく、組合事業から生じる損益が各組合員に直接帰属するものとして取り扱われます(いわゆるパススルー課税。法基通14-1-1)。

また、民法上の組合においては、組合財産は総組合員の共有に属するとされており(民法668条)、組合名義で保有されている株式も、法律上は各組合員が持分割合に応じて共有していることになります。損益がパススルーされることと、株式そのものが誰に帰属するのかは本来別の論点ですが、いずれも「組合員ベースに判断する」という方向を支えるものといえます。

そのため、株主名簿上は「組合」として記載されている場合であっても、各種判定においては、組合員単位で判定すべき場面があります。

ただし、すべての制度で常に同じように組合員単位で判定すればよいわけではありません

法人税法上の各制度は、それぞれ目的や条文の文言が異なるため、ある制度では組合員単位で見ることが明確であっても、別の制度では、条文構造や制度趣旨を踏まえて慎重に検討する必要があります。

特に、後述するスピンオフ税制の非支配要件欠損等法人の特定支配関係については、「他の組合員を取り込んで判定する」旨の特別な規定が置かれています。

逆にいえば、こうした特則が置かれていること自体が、特則のない制度では組合員単位に分解して判定することが前提とされていることを示唆しているとも考えられます。

そこで今回は、組合株主がいる場合の支配関係等の判定について、制度別に整理しています。

なお、本投稿では、組合を日本税務上パススルーとして取り扱うことを前提とし、外国LPSや外国パートナーシップが日本税務上の法人に該当するか、といった、いわゆる外国事業体の法人該当性の論点は本稿の対象外としています(この点は、最高裁平成27年7月17日判決(デラウェア州LPS事件)が参考になります)。

支配関係における組合株主の取扱い

法人税法上の「支配関係」は、一般に、一の者が法人の発行済株式等の総数等の50%超を直接または間接に保有する関係などをいいます(法2十二の七の五、法令4の2①)。

なお、この「一の者」は、その者が個人である場合には、その者およびその者と特殊の関係のある個人(親族等)を含めて判定することとされています(法令4の2①、法令4①)。組合員に個人が含まれている場合には、この点にも留意が必要です。

組合が株式を保有している場合に問題となるのは、その組合保有分を組合自体の保有として見るのか、それとも組合員の持分に応じて各組合員の保有として見るのかという点です。

組合がパススルーとして取り扱われることを前提とすれば、組合名義の株式についても、基本的には組合員の持分に応じて各組合員に帰属するものと考えられます。

ケース
  • A社株式のうち、X組合が60%を保有
  • X組合の組合員は、B社が50%、C社が50%

この場合、株主名簿上はX組合が60%を保有しています。X組合を1人の株主として見れば、A社との間に50%超の支配関係があるように見えます。

しかし、X組合をパススルーとして組合員に分解して見ると、B社・C社はそれぞれA社株式30%相当を保有しているにとどまり、いずれも単独では50%超を保有していないことになります。

このように、組合単位で見るか、組合員単位で見るかによって、支配関係の有無が変わる可能性があります

完全支配関係における組合株主の取扱い

完全支配関係は、一般に、一の者が法人の発行済株式等の全部を直接または間接に保有している関係などをいいます(法2十二の七の六、法令4の2②)。

組合株主が一部の株式を保有している場合に、100%保有関係が阻害されるかが問題となりますが、この点、支配関係と同様に、組合がパススルーとして取り扱われることを前提とすれば、組合員レベルで判断することになります。

なお、完全支配関係は、寄附金・受贈益の取扱い(法37②、法25の2)、譲渡損益調整資産(法61の11)、中小法人向け特例の不適用(大法人による完全支配関係。法66⑤二)など、適用範囲が非常に広い概念です。組合株主の存在により完全支配関係の判定を誤ると、その影響が組織再編税制以外の広い範囲に及ぶ点にも注意が必要です。

また、完全支配関係では5%ルールというものがあります。

これは、完全支配関係の判定上、一定の従業員持株会の株式保有割合が5%未満である場合には、その5%未満の株式を発行済株式から除いたところで保有割合を計算することとされているものです(法令4の2②)。

ケース
  • 親会社P社がS社株式の98%を保有
  • 残り2%を従業員持株会が保有

形式的には、P社はS社株式の100%を保有していないことになります。

しかし、完全支配関係の判定には、一定の従業員持株会保有株式や、新株予約権の行使により役員等が取得した株式について、その合計が発行済株式総数の5%未満である場合には、これらを発行済株式から除外して判定する取扱いがあります。

ただし、この5%ルールは、一般のファンドや任意組合が保有する株式に適用されるものではありません。対象となるのは、一定の要件を満たす従業員持株会保有株式等です。

したがって、完全支配関係の判定では、株主が「一般の任意組合・LPSなのか」「従業員持株会なのか」、また「5%ルールの対象となる株式なのか」を区別して検討する必要があります。

さらに、同じ「従業員持株会」であっても、民法上の組合に該当する証券会社方式(5%ルール適用可能)と、人格のない社団等に該当する信託銀行方式(5%ルール適用不可)とで、完全支配関係判定上の取扱いが異なり得る点にも留意が必要です。名称が同じでも、その法的構成によって税務上の結論が変わり得ます。

この点については通達上も、5%ルールの対象となる組合は民法667条1項に規定する組合契約による組合に限られるため、いわゆる証券会社方式による従業員持株会は原則としてこれに該当するが、人格のない社団等に該当するいわゆる信託銀行方式による従業員持株会はこれに該当しない旨が明らかにされています(法基通1-3の2-3)。

そのため実務上は、「証券会社方式か信託銀行方式か」という呼称ではなく、規約上、民法上の組合として組成されているかどうかを確認することが重要です。あわせて、ここでいう「使用人」には使用人兼務役員は含まれないこととされている点にも留意が必要です(法基通1-3の2-4)。

匿名組合が介在する場合の取扱い

ここまでは、いわゆる任意組合等(民法上の組合、LPS、LLP)を前提としてきましたが、ファンドが関与する取引では、匿名組合(TK)が用いられることも少なくありません。匿名組合は、任意組合等とは結論が異なる点に注意が必要です。

匿名組合の場合、匿名組合員の出資は営業者の財産に属するものとされています(商法536①)。したがって、匿名組合を通じて株式が保有されている場合、その株式を保有しているのは営業者であり、匿名組合員ではありません。

いわゆるTK-GKストラクチャーのように、合同会社が営業者となって対象会社株式を保有している場合には、支配関係の判定も営業者である合同会社を株主として行うことになります。任意組合等と同じ発想で「組合員に分解する」と、結論を誤ることになります。

適格合併における支配株主判定

適格合併では、当事者間の関係に応じて、完全支配関係内の合併・支配関係内の合併・共同事業を行うための合併といった類型ごとに、適格要件が異なります。

組合株主が特に問題となるのは、共同事業要件による合併における支配株主の継続保有要件です。

共同事業要件による適格合併では、被合併法人に支配株主がいる場合、その支配株主に交付される合併法人株式等が継続して保有される見込みであることが求められる場面があります。

被合併法人の株主に組合がいる場合、支配株主は組合なのか組合員なのか、組合員に分解した場合に支配株主に該当する者がいるのか、交付株式の継続保有見込みを誰について判定するのか、といった点が問題となります。

ケース

被合併法人株式の60%を任意組合が保有している場合――

  • 組合を1人の株主として見れば、支配株主が存在するように見える
  • 一方、組合員が多数存在し、各組合員の持分が少数に分散している場合には、組合員単位では支配株主が存在しない

この点、組合株主がいる合併では、適格要件の検討において、単に組合名義の保有割合を見るのではなく、組合員単位で支配株主を判定することになると考えられます。

なお、この株式継続保有要件は、合併の直前に被合併法人について他の者による支配関係がある場合、すなわち支配株主が存在する場合にのみ課される要件です(法令4の3④)。したがって、組合員単位に分解した結果、支配株主が存在しないこととなる場合には、そもそも株式継続保有要件を検討する必要がなくなります。

つまり、組合単位で見るか組合員単位で見るかは、「要件を満たすかどうか」という次元にとどまらず、「そもそもその要件が課されるかどうか」という次元にまで影響します。

適格分割における支配株主判定

適格分割についても、合併と同様に、支配関係・完全支配関係・共同事業要件が問題となります。

特に分割型分割では、分割法人の株主に対して分割承継法人株式が交付されるため、分割法人の株主構成が重要になります。

組合株主がいる場合、分割法人の支配株主を組合単位で見るのか組合員単位で見るのか、分割承継法人株式の継続保有見込みを誰について判断するのか、分割後に組合員が持分を譲渡する予定がある場合に適格要件に影響するのか、といった論点が生じます。

分割型分割では、分割法人の株主が分割承継法人株式を取得するため、株主側の継続保有見込みが重要です。組合が株主である場合、その継続保有見込みを組合自体について判断するのか、組合員について判断するのかが問題となります。

この点、分割においても基本的に合併と同様、組合員単位で判断することになると考えられます。

また、上記の考え方は株式交換・株式移転(スクイーズアウトを含む株式交換等を含みます)においても同様と考えられます。

株式分配・スピンオフ税制における非支配要件

株式分配、特にスピンオフ税制においては、非支配要件の判定が重要となります。

スピンオフ税制では、分割または株式分配の直前において、分割法人等と「他の者」との間に、その他の者による支配関係がないことなどが要件とされます。

株主に組合が含まれている場合、組合を1人の「他の者」として見るのか、組合員や他の組合員を含めて「他の者」による支配関係を判定するのかが問題となります。

この点については、組合契約に係る他の組合員を含めて「他の者」に該当するかを判定する考え方が示されています(分割型分割によるスピンオフは法令4の3⑨一、株式分配は法令4の3⑯一)。

法令4の3⑨一(抜粋)

他の者(その者が締結している組合契約及び次に掲げる組合契約に係る他の組合員である者を含む。以下この号において同じ。)

条文の一部抜粋。ここでいう組合契約には、民法上の組合契約、投資事業有限責任組合契約、有限責任事業組合契約が含まれ、組合が締結している組合契約についても順次取り込まれる構造となっている。

ここで重要なのは、この規定が「組合を1人の株主とみなす」ものではないという点です。条文は、各株主をそれぞれ「他の者」として判定するにあたって、その者と組合契約でつながる他の組合員をその「他の者」に取り込む、という構造になっています。

そのため、どの株主を起点として判定するかによって「他の者」の範囲が変わり、支配関係の有無の結論も変わり得ます。

国税庁質疑応答事例(非支配要件の判定)

国税庁の質疑応答事例「独立して事業を行うための分割に係る適格要件(非支配要件)の判定について」では、重層的な組合を通じて株式が保有されているケースについて、次の結論が示されています。

  • 個人株主AまたはBを「他の者」とした場合――親族および他の組合員を含めて発行済株式の55%を保有することとなり、支配関係がある
  • C社を「他の者」とした場合――45%にとどまり、支配関係はない

すなわち、株主ごとに判定を行い、いずれか一人でも支配関係が認められれば、非支配要件は満たさないという結論になります。

また、同事例では、組合が別の組合の組合員となっている重層的な組合構造についても、順次遡って「他の者」に取り込まれることが示されています。ファンド・オブ・ファンズのような構造では、直接の組合員だけでなく、その上位の組合員まで確認する必要があると考えます。

欠損等法人の特定支配関係における組合関連者

欠損等法人の欠損金利用制限においても、組合株主は重要な論点となります。

欠損等法人については、特定支配関係が生じ、一定の事由に該当すると、欠損金の繰越控除が制限されることがあります(法57の2)。あわせて、特定資産の譲渡等損失額についても損金不算入とされる点に留意が必要です(法60の3)。

この特定支配関係の判定においては、「組合関連者」という文言が用いられています。

具体的には、特定支配関係は「他の者(その者の組合関連者を含む。)」と法人との間の当該他の者による支配関係とされており(法令113の3①)、組合関連者には、その者が締結している組合契約に係る他の組合員などが含まれます(法令113の3④)。

ここでいう組合契約等の範囲は、民法上の組合契約、投資事業有限責任組合契約、有限責任事業組合契約および外国におけるこれらに類する契約とされており(法令113の3④)、匿名組合契約は含まれていません。また、組合が締結している組合契約についても順次取り込む規定が置かれており、重層的な組合構造にも対応した内容となっています(同項一号〜三号)。

さらに、同一の者による支配関係の判定においても、同一の者の組合関連者が有する株式は、その同一の者が有するものとみなすこととされています(法令113の3③)。

このため、欠損等法人の買収において、形式的には複数のファンドや投資家により分散して株式が取得されているように見える場合でも、組合関連者を含めて判定すると、特定支配関係が認められる可能性があります。

制度によって結論が分かれる理由

ここまで見てきたとおり、組合株主の取扱いは制度ごとに一様ではありません。

支配関係・完全支配関係の判定は、組合財産が組合員の共有に属するという私法上の性質を前提に、組合員単位で判定するのが基本的な考え方となります。

これに対して、スピンオフ税制の非支配要件欠損等法人の特定支配関係については、組合員単位に分解すると、形式的に持分を分散させることで容易に要件を満たしたり、制限を回避したりすることが可能となってしまいます。そこで、「他の組合員を取り込む」という特則が置かれ、組合を通じたつながりを実質的に捉える仕組みとなっています。

つまり、こうした特則が置かれているのは、租税回避を防止する必要性が特に高い制度に限られており、逆にいえば、特則が置かれていない制度については、原則どおり組合員単位で判定することが前提とされていると整理することができるとも考えます。

実務上の確認ポイント

組合株主が存在する場合、実務上は次のような点を確認する必要があると考えます。

確認すべき事項
  • 組合の種類(民法上の組合・LPS・LLP・匿名組合・信託のいずれか)
  • 組合契約書における持分割合と損益分配割合(両者が異なる場合、株式の帰属割合をどちらで見るのかが論点となります)
  • 組合員名簿および重層的な組合構造の有無
  • 組合員の異動の有無(欠損金の引継制限・使用制限や特定資産譲渡等損失の制限のように支配関係が5年超継続しているかどうかが問われる場面では、組合員の入替えが支配関係の継続に影響しないかを確認する必要があります)
  • 議決権の行使方法に関する合意の有無(同族会社の判定など議決権ベースの判定では、特定の組合員の意思により議決権が行使される旨の合意があるときは、その組合員が議決権を有するものとして取り扱われます。株式数ベースの支配関係の判定とは判定軸が異なる点に注意が必要です)

なお、実務上の難所として、組合員が機関投資家等である場合には、組合員名簿が守秘義務等を理由に開示されないことも少なくありません。

この場合、判定に必要な情報をどこまで入手できるかがそのままリスクとなるため、株式譲渡契約における表明保証やクロージングの前提条件でどのように手当てするか、という観点からの検討も必要になると考えます。

まとめ

このように、株主に任意組合やファンド、従業員持株会といった「組合」が含まれている場合、支配関係等の判定を組合単位で見るのか組合員単位で見るのかによって、税務上の結論が大きく変わる可能性があります。

しかも、その取扱いは制度ごとに一律ではなく、それぞれの制度趣旨や条文の文言を踏まえて検討する必要があります。

また、同じ「組合」という名称であっても、任意組合等と匿名組合とでは株式の帰属そのものが異なり、従業員持株会についても、その法的構成によって取扱いが分かれます。名称ではなく法的構成から確認することが出発点となります。

実務上は、株主名簿上の名義だけで判断するのではなく、組合契約書、組合員名簿、持分割合・損益分配割合・議決権の帰属、重層的な組合構造の有無などを確認したうえで、各制度ごとに慎重に判定することが重要です。

特にファンドが関与するM&Aや組織再編では、ストラクチャーの検討段階から、組合株主の取扱いが各制度の判定に与える影響を確認しておくことが望まれます。

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