M&Aのスキームにおいて、株式譲渡(ストックディール)と事業譲渡(アセットディール)は頻繁に用いられるスキームです。
しかし、その効果や影響は異なるため、どちらを用いるべきか、案件ごとに慎重に検討を行う必要があります。
そこで今回は株式譲渡と事業譲渡の違いについて、税務の観点を中心に整理し、どのような点に留意してスキームを判断すべきか、ポイントをなるべく簡単にまとめています。
株式譲渡と事業譲渡とは?
株式譲渡と事業譲渡はそれぞれ次のような取引となります。
株式譲渡
売手が、対象会社株式を買手に譲渡し、買手から株式譲渡の対価を取得する。

事業譲渡
対象会社が、事業(事業に必要な資産や負債)を買手に譲渡する。

株式譲渡は、買手に対象会社の株式を譲渡することになるため、買手は対象会社の資産、負債、契約、許認可などを含め、法人格ごと対象会社の事業を取得することになります。
一方、事業譲渡は、対象会社が保有する資産や負債を個別に取得することになります。
そのため、リスクの潜在する資産や負債を取得しないということも可能であり、また、簿外債務などを引き継ぐこともありません(株式譲渡の場合は、法人ごと取得することになるため、潜在リスクや簿外債務も引き継ぐことになるといえます)。
その他の相違点
その他にも細かい違いが様々あります。
詳細な説明は色々なサイトでも記載されているため割愛しますが、網羅的に論点を列挙し、それぞれの相違点を整理すると、次のようになります。

このような相違点を踏まえ、どちらを選択すべきかについては、個別の状況や目的を考慮して、慎重に検討する必要があります。
また、一時的な取引の影響のみならず「将来的に引き継いだ法人や事業をどうするか」「他の法人との合併の可能性があるか」「将来、譲渡やIPOを行うか」といった点も考慮して、スキームを選択する必要があると考えます。
留意点
これらの話を踏まえ、両スキームで比較検討する場合に留意すべき点を図解にすると次のとおりです。

このように株式譲渡と事業譲渡には様々は相違点があり、どちらを選択するかによって、各法人における税務上の影響は大きく異なることもあります。
各個別の状況によって、どちらが有利になるか異なることもあり、また、ひとつの論点において有利な方法が明確にあったとしても、税務以外の論点などを総合的に検討すると、逆の方法を選択したほうが全体的なメリットは大きい、といったことも生じることがあるため、検討の際には専門家に相談して、論点を整理して進めることが重要と考えます。
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本記事は、あくまで一般的な取り扱いを記載しているものとなり、個人的な見解も含まれるため、個別の状況に応じて結論が異なる可能性があります。この記事に基づいて具体的な判断や行為を起こす前には、必ず税務専門家に相談する必要があると考えます。
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