別の記事で、内国法人の親会社である外国法人が、その子会社である内国法人の株式を譲渡した場合に事業譲渡類似株式の譲渡として、日本で課税が生じる可能性がある点を説明しています。
同じく、クロスボーダー取引において問題が生じやすい論点として「不動産化体株式の譲渡」というものがあります。
今回は、事業譲渡類似株式の譲渡よりも複雑な規定となっている「不動産化体株式の譲渡」について、まとめています。
不動産化体株式の譲渡とは?
日本の国内法において、不動産関連法人の株式を譲渡した場合には、国内源泉所得として日本で課税されると規定されています。不動産関連法人とは次の要件を満たす法人をいいます。
- その株式の譲渡の日から起算して365日前の日からその譲渡の直前の時までの間のいずれかの時において,その有する資産の価額の総額のうちに国内のある土地等や不動産関連法人の株式等の価額の合計額の占める割合が50%以上である法人をいう。
- 譲渡事業年度開始の日の前日において,その株式等に係る法人の特殊関係株主等がその法人の発行済株式等の総数の2%(上場している場合には5%)を超える株式等を有し,かつ,その株式等の譲渡をした者が特殊関係株主等である場合の譲渡
本条文はかなり読みづらいものとなっていますが、次のような譲渡は不動産関連法人の譲渡になると考えます。

※不動産や不動産関連法人の割合が資産の50%以上であることを前提
事業譲渡類似株式の譲渡との違いとしては、直接譲渡のみならず、間接譲渡も対象にしている点があります。
租税条約における読み替え
不動産化体株式の譲渡の規定は、国内法で定められています。
しかし、租税条約において別途規定が設けられている場合には、租税条約を優先するということになっています。
そのため、譲渡した外国法人が所在する国と日本との租税条約を確認し、租税条約で規定があった場合には、租税条約の規定を優先することになります。
不動産化体株式の譲渡の規定は多くの租税条約で規定されているものの、細かい規定は異なるため、注意して確認する必要があります。
まとめ
このように、外国法人が日本の株式を譲渡した場合、不動産化体株式の譲渡に該当し、日本で課税が生じることもあるため、注意が必要です。
特に不動産化体株式の譲渡は間接譲渡も対象としているため、見落とす可能性も高くなっています。
また、租税条約によって読み替えられ、課税が免除されることもあるものの、租税条約の記載は国によって様々であるため、国によって租税条約の規定がどうなっているか、その個別ケースにおいて租税条約を適用する要件を満たすか、租税条約を適用するためにどのような手続きが必要か、といった点に注意して確認しないと、思わぬ課税が生じてしまうこともあると考えます。
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