M&Aにおいて税務デューデリジェンス(税務DD)は、過去の申告の税務リスクの洗い出しだけでなく、取引条件(価格調整・表明保証・補償条項)、買収ストラクチャー、クロージング後の再編取引や税務ガバナンスに影響し得るリスクを把握するための重要なプロセスです。

本稿は、実務で多数の税務DDに関与してきた中で、実際に論点となった事例を、個別の背景や取引詳細が特定されない範囲で抽象化したうえで紹介します。

なお、本稿で取り上げる論点について、「税務上の最終的な取り扱いがどのように整理されるべきか」といった詳細な検討や結論の提示は行っていません

あくまで、税務DDの過程において「どのような論点が、どのような形でリスクとして認識されたのか」、また、それを踏まえて「税務DDを実施する際にどのような点に留意すべきか」という実務的な観点から整理している点にご留意ください。

税務デューデリジェンスの論点事例

事実関係
  • グループ会社内で、日本親法人から海外子会社に対して、海外子会社に対する債権のDESを実施している。
  • 現物出資した債権は、簿価=時価として譲渡を行っており、譲渡損益は認識していない。
  • 現物出資した債権について、グループ内で回収可能性や時価の検討はしていない。
  • 現物出資に係る検査役調査など実施していない。

検出された税務論点

論点
  • 海外子法人に対するDESは、クロスボーダーにおける現物出資であるため、非適格現物出資に該当し、時価で譲渡したものと取扱われると考えられる。
  • 時価算定が行われておらず、時価の金額によっては現物出資法人(日本親法人)において、寄附金を認識すべきとの指摘を受ける可能性がある。

税務上の取扱いとリスク

本件は海外子会社に対するDES(クロスボーダー現物出資)を実施したケースとなります。

DESは税務上の現物出資となりますが、DESの税務上の取扱いについてはこちらの記事で説明しているので、ご参照ください。

クロスボーダーの現物出資で一定のものは、税務上の非適格現物出資として取り扱われます。

非適格現物出資の場合、現物出資した資産は時価によって移転したものとして取り扱われるため、債権の時価が簿価よりも低い場合には、債権譲渡損(または寄附金)が認識される可能性があります。

実務上の示唆

グループ内における債権債務関係の解消として、DESが実施されることは実務上見られますが、グループ内取引の場合には、細かい検討が行われないまま実施されていることも少なくありません。

そのため、税務DDにおいては、グループ内取引の背景取引時にどのような検討が行われたのかなどは、慎重に分析する論点のひとつといえます。

また、クロスボーダー取引など、担当する税理士事務所が慣れていない場合には、十分な検討がされていないケースも多くみられます。

そのため、当時の検討状況の確認においては、どのような税務アドバイザーに、どのような検討依頼をしたのか、検討時に意見書やコメントの内容などを詳細に確認することが、税務論点のリスクを判断する上で重要と考えます。

一般的な税務デューデリジェンスの流れや方法については、こちらで詳細を説明していますので、ご参考ください。

その他、税務デューデリジェンスの論点事例について、以下ご参照ください。

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本記事は、あくまで一般的な取り扱いを記載しているものとなり、個人的な見解も含まれるため、個別の状況に応じて結論が異なる可能性があります。この記事に基づいて具体的な判断や行為を起こす前には、必ず税務専門家に相談する必要があると考えます。

当事務所においても相談を承っておりますので、お気軽にご連絡ください。

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